この世界は美しい。
本稿では各狩猟地のベースキャンプを記録する。
キャンプの造りから周囲の環境を考察する事が出来るだろう。
森丘の狩猟地は陽当たりの良い丘陵部(1,2,3,4,6)と
鬱蒼とした森林部(7,8,9,10,11,12)で東西に分かれる。
中央の岩山(5)は飛竜の住処だ。
ベースキャンプは河川を望む丘陵の隅に位置し、
周囲は大型竜が進入不可な岩の狭間に守られている。
周辺の安全:◎
天幕の水準:◎
備品の品質:△
岩の狭間を囲う林の陰に隠す様にして設置されたベースキャンプ。
付近に生息する飛竜からは容易に発見されない気配りが成されている。
天幕の水準は高く、強固なフレームとシールドでシートが守られている。
拠点としての重要性が此処までする程強かったと言う事だろう。
設置時期は非常に古く、キャンプ内は質素でベッドも不潔で硬い。
休憩場所と言うより臨時的な死体安置所に近い。
森丘の奥地では荒廃したベースキャンプ跡地が見られる。
散ばった部品は現在の代物と同様である事から設置時期の近さが伺える。
つまり、このベースキャンプは設置直後に襲撃によって破壊された筈だ。
発見当時、散ばった部品の中で巨大な椅子の様な物だけが何なのか判らなかったのだが。
先遣隊のキャンプ設置班に尋ねたところ、
これはテントのフレームをフライシートで固定する金具だったんだな。
密林の狩猟地は大部分が山林(1,2,5,9)を占める。
山を降りれば巨大湖を望む白浜(3,4,10)が広がり、
逆に奥地へ踏み入れば巨大洞窟(6,7,8)が存在する。
ベースキャンプは山林へ向かう坂道に面した
白浜に停泊する小舟だ。
周辺の安全:×
天幕の水準:△
備品の品質:△
比較的崖の間隔が狭く、遠景からは滝飛沫に隠れるであろう白浜に停泊した小舟。
船の構造から快走艇である事は明白だ。帆装はプロア式。
天幕では無い点が他の狩猟地とは異なる。
縦帆一枚のクラブクロウセイルは逆風への推進力を期待する物だが
いかんせんマストの高さに対して船体が長過ぎやしないだろうか。
ベッドの規格は森丘と大差ないが、風通しが良い分だけ寝心地はこちらが上か。
周囲には軽食が残されている。船旅の最中に用意した物だろう。
すぐ目の前で釣りが楽しめるのだから餌箱くらい常備して欲しい。
停泊場所から一歩踏み出せば水竜等が出没する領域となる。
また、周囲の崖上と白浜は鳥竜の順回路が隣接する。
何時襲撃されても不思議ではないだろう。
砂漠の狩猟地は広大な砂丘(1,2,5)と、
不毛な岩地(3,4,7,8,9,10)で構成され、
地下には水脈(6)が通る。
ベースキャンプは地下洞窟の真上に位置する。
水源に集まる竜達を狩猟するには便利な立地だ。
周辺の安全:◎
天幕の水準:△
備品の品質:△
岩陰に設置されたベースキャンプ。
砂漠という過酷な環境下にありながら砂避けも貯水施設も無い。
天幕自体は基本的だが周囲の環境に併せた造りとは言い難いだろう。
キャノピーを開けっ放しにした状態で毛布を広げておくとは何事か。
付着した砂利が安眠を妨げる。シートを保護するシールドも無い。
拠点の隅では古井戸が半壊している。
掘鑿(くっさく)孔は既に干上がり、現在は地下洞窟への通路として利用されている。
洞窟の真上に位置するだけあり、設置場所は高台になる。
登るには崖沿いの細道を通らねばならず、大型竜は進入できない。
また天幕も上空からは岩影に隠れて容易に視認できず、安全性は高いと言える。
沼地の狩猟地は多様な環境が混在する。
ベースキャンプが位置する池沼から
湿地(4,5,6)と山岳部(1,2)を抜けて湿原(8)へと至る。
道中を脇に逸れると洞窟(3,7,9)が広がる。
キャンプは比較的安全な山岳部に隣接している。
周辺の安全:△
天幕の水準:◎
備品の品質:△
池沼から少し高い位置の段差に設置された天幕。
造りは森丘の物と同様だ。
当然、内装は味気ない。
偶然にもシールドがベッド真上のベンチレーションに被さり雨除けを兼任している。
室内で身体を乾かす為の何かがあれば雨天の休憩所として申し分無かった。
池沼水面すれすれに支給ボックスが置かれている。
雨天による水位の上昇を懸念すれば納品ボックスの横に置くのが妥当だと思うのだが。
物資供給班は池沼上を小舟等でやって来る、という事だろうか。
天幕から各方面に通じる路地は狭く、陸上から大型竜が進入する事は難しい。
上空に関して言えば天幕背後の段差が旨く視界を遮ってくれる。
だが沼地は地中を移動する怪物が少なくないので池沼からの襲撃に不安が過ぎる。
沼地は日中常に雨が降るような気候だ。
ボックスには雨除けが必要ではなかろうか。
火山の狩猟地は硬化した溶岩の表層(1,2,7,9,10)と
未だ紅蓮の溶岩が流れる洞窟(3,4,5)で構成され、
登頂部には活動中の火口(6,8)が拝める。
ベースキャンプは火山に隣接する海岸に設置され、
洞窟への侵入と登山の両方にアクセス可能だ。
周辺の安全:×
天幕の水準:△
備品の品質:△
密林同様、快走艇をそのままキャンプとして利用している。
溶岩が何時襲ってくるとも判らないので、移動式の拠点にした判断は正しい。
船の規格は密林で利用しているものと同様だ。
周辺に魚が居ないので、釣りを楽しむ事は出来ない。
何箇所か狩猟地を巡る間に、このベッドにも慣れてきてしまった。
こと火山においては涼むのに丁度良い。
周囲の岩石は、海水付近で急激に冷却され海面に対して迫出す様に硬化している。
危険な竜は熱い場所に身を潜めているが、此処は溶岩と言う地理的な危険が拭えない。
雪山の狩猟地は白銀の山頂(6,7,8)と
麓の高原(1,2)を入り組んだ氷洞(3,4,5)が結ぶ
寒冷地帯の山脈だ。
ベースキャンプは麓に茂る林木に隠れた
小さな崖の上に設置されている。
周辺の安全:◎
天幕の水準:◎
備品の品質:△
急斜に密集する針葉樹の狭間に組まれた天幕。
麓からは幾許も離れていない為、日中の温かさから雪塊は疎らだ。
天幕の造りは森丘と同様となる。
近郊にはポッケ村が在り、キャンプに大掛かりな設備は要しない。
内部の防寒対策は無いに等しい。
夜まで出発を待つなら肉焼器が暖炉の代わりに成る。
キャンプまでの道程は細く険しい。
上空からの視認は難しく、また進入するのも容易ではない。
麓の川まで大型竜が降りて来る事は確認されているが、此処は安全と言えよう。
古塔の狩猟地は古塔入口周辺(1,2)と古塔内部(3~)で構成される。
塔へ至る道程は一方通行だが、塔内の構造は定まっていない。
類似した地点が多く、未だに正確な地図は作成中なのが現状だ。
ベースキャンプは塔へ続く高台の中腹に設置してある。
周辺の安全:◎
天幕の水準:×
備品の品質:×
これまでの狩猟地とは一線を画す造りをした古塔の天幕。
原始的な構造にせざる得なかったのは、辺境に物資を搬送し難かった故か。
備品の数も少ない。
他のキャンプに見られる食料や飲料等の嗜好品は見当たらない。
日当たりが悪く、シートも小さい。
雨が降ったら並んでる枕に沿って身体を横たえる必要があるだろう。
いや、それでも濡れそうだな。
周辺は川の潺ぎと滝の音が耳朶を打つ風流な場所だ。
川底は低いが釣りもできる。
地理的には此処まで到達する事が困難なのだが、周辺は安全と言えよう。
樹海の大部分が樹木(1,2,3,4,5,6)に覆われた大地だ。
狩猟区域中央には超巨大な大樹が聳え、
内部(7,8)に侵入する事が可能だ。
ベースキャンプは樹海の中でも比較的高台で、
周囲が岩石や倒木の陰になる場所に設置してある。
周辺の安全:△
天幕の水準:△
備品の品質:△
鬱蒼と茂る樹木に潜む様にして構えられたキャンプ。
造りは標準的だ。
シートの上には落ち葉が積もっている。
まめに払っておかないと湿気を含み、皮の腐食を招いてしまう。
天幕内には酒が常備されている。単純な嗜好品としても価値あるが、
量を調節すれば素早い睡眠を促したり、疲労状態下における体温回復にも役立つ。
物陰でありながら地形を見下ろせる為、一見すると安全地帯に見える。
だが樹海に生息する肉食竜は隠れた獲物を探す等は日常茶飯事であり、油断できない。
峡谷の狩猟地は険しく風化した大地(1,2,4,5)が
地平線まで広がっている。隆起を経た地質は
豊富な石灰を含み、鍾乳洞(3,6)が点在する。
ベースキャンプは断崖絶壁の窪みに設置され、
外敵どころか狩人でさえも近づき難い環境に在る。
周辺の安全:×
天幕の水準:△
備品の品質:△
狭い岩橋の先で袋小路に設置された天幕。
眼下を見下ろせば絶壁を吹き抜ける風が背中を押す。
転落すれば着水まで遮る物は何も無い。
目測13階建相当、約50m、衝突時速110km/h、推定被害全身粉砕骨折、生存率2%。
内装は特筆すべき点が無い。
唯、周囲に置かれた木箱は他のキャンプより多く、備蓄は多いのかもしれない。
峡谷の狩猟地の中心エリアには破壊された天幕がある。
木箱や施設の状態は悪くないが上部のシートが見当たらない。
裏手の支柱は崖に滑り込んでいる。
峡谷は豪雨と強風が襲う事も多いが、之はその被害だろうか。
高地の狩猟地は延々と続く絶壁(1,2,6,7)と岩壁内部の水脈で形成された洞窟(3,4)が織り成し、日中を通して天候が二転三転する過酷な環境だ。
絶壁の頂上(5)は異形の岩が佇む。
ベースキャンプは絶壁の中腹に設置され、河川からの登山路(7→1)で腰を落ち着ける事が出来る。
周辺の安全:◎
天幕の水準:△
備品の品質:✖
絶壁を沿う足場の中でも開けた場所に設置された天幕。
すぐ目前には頼りない吊橋の向うに安全とは言い難い小道が続く。
豊富な水で削られた崖は峡谷とは異なる姿の断崖を見せる。
急峻な道程は人も動物も通る者を選ぶ為、
外敵の危険は無くとも物資の輸送は困難だ。
当然ながら天幕の水準は残念な事になっている。
しかし沿革上では比較的新しい秘境となる狩猟地だ。
せめて腐食に弱そうな寝床の規格は改めて頂きたい。
こうして撮影をしている間にも何度か雨が降ったり止んだりを繰り返す。
登山中に落雷を度々見掛けるのだが、此処には避雷針を設置しなくても大丈夫なのだろうか。
潮島の狩猟地は海岸沿いの潮間帯に根付く海漂林(1,2)が特徴的な狩猟地だ。島の内部は密林(3)が広がり、中央の火山へ向かう方角には巨大な洞窟(4,5)が地中深く入り組む。最深部は未だ地図が未完成だ。
ベースキャンプは密林と洞窟の双方にアクセス可能な海岸に設置され、狩猟対象により地上か地下のどちらか一方が戦場となる。
周辺の安全:△
天幕の水準:△
備品の品質:◎
天幕の背後に聳える火山。島は噴火により形成され、岩地は溶岩が固まったものと思われる。
岩肌の横縞模様から察するに、台風でも来たら海没するだろう。
天幕から望む白浜。脇には島への移動に使用した小舟が停泊している。
岩地を抜けた向うに続くマングローブが潮島と呼ばれる所以だ。
天幕の形状は標準的だが、内装には茣蓙(ござ)が敷かれている。
物珍しさに此処が寝床だと勘違いしてしまいそうだ。
帆の無い舟を使用した事から大陸との距離は遠くないものと推測できる。
船体の陰が心地良いのか、周辺には魚がよく集まるので食料には事欠かない。
極海の狩猟地は全区域が巨大な海氷を足場とする。
キャンプからは小さな海氷群(1)を隔て、空を拝める氷台(2,3)とそれに挟まれた崖(4)、奥地の氷洞(5,6)によって構成される。
ベースキャンプは狩猟地となる氷塊の外れに位置し、氷洞までは必ず空に露出した氷上を長く移動しなくてはならない。
周辺の安全:◎
天幕の水準:◎
備品の品質:◎
特筆すべきは規格外の水準の高さを誇る天幕だ。
之迄の鱗皮製を過去の物にする毛皮仕様、そして新たな骨組み。
内装はあらゆる防寒対策が施されている。
骨格は壁と天井のパーツで分けられたロッジ型だ。
設営のし易いドーム型よりも居住性に重点を置いたのだろう。
内装も毛皮が惜しみなく使用されている。
居心地の良さに周辺の小動物も休みに来るが、
彼らは自分が寝ている毛皮が親のそれだと気付いているのだろうか。
快適過ぎて出たくないが、重い腰を上げて外に出ると
直ぐに一面を覆う氷の景色が目に映る。
大型種の怪物では移動が困難な小さい海氷を隔てた場所にある天幕。
安全性や規格、備品に至るまで文句の無い評価だ。
今後の狩猟地も同じ設計者に天幕を作って頂きたい。
花畑の狩猟地は緩やかな丘陵を覆う花畑(1,2,3,4)と、その何処からでも進入可能な原住民の住処たる洞窟(5)で構成される。
ベースキャンプは洞窟と花畑の双方へ直結する丘の影に設置されるが、戻るには平原を通らなければならない。
周辺の安全:△
天幕の水準:✖
備品の品質:△
極海に次いで開拓された狩猟地との事で天幕の規格に期待するや、妙な角度で驚かされる。
待ち構えていたのは天幕(テント)ではなくタープ、の様な物だった。
恐らく設営者は周辺に身を隠す物が無いので目立つ外観を避けたのだろう。
備品と言えば大桶くらいのものだ。
シートには申し訳程度の草が被せられている。
周辺の丘陵は段差が多いが高低差は乏しく、全体的に開けた大地だ。
狩猟対象からの目を忍ぶなら崖をそのまま削って利用するのが最適だったのかも知れない。
背の高い植物は少なく、木はまばらな平原が続く。
大型の飛竜や鳥竜に発見されようものなら逃げ場に窮するだろうな。
その時は原住民共の隠れ家でも借りるとしよう。
竹林、もとい竹林奥部は特定狩猟対象討伐の為に開拓された決闘場式の領域だ。高台からは広大な竹林と山岳が望める。
ベースキャンプは雲すら眼下とする岩山の高台に茂る竹林の影に設置されている。
周辺の安全:◎
天幕の水準:◎
備品の品質:△
天幕の規格は今回も斬新だ、二重の意味で。
側面は周辺の竹をポール代わりにし、フライシートはアーチ状に組んだ竹から吊っている。
もはやロッジ型なのかAフレーム型なのか判らない。
天幕の半分が開けた状態なので内装は非常に広く感じる。
寝床は組んだ竹に麻布を敷いたもので通気性が良さそうだ。
寝ながら月見も良かろう。
周辺の竹はキャンプ設置後も急速に増え続け、納品箱が押し上げられている始末。
数年後には竹で串刺しになっている天幕の姿が想像できる。
壁の様に密集した竹林が天幕を周囲から隠す。
それは狩人にとっても同様で、此処から散策可能な領域は狭い。
風流な場所だから狩猟領域の拡大を願いたいところだ。
以上だ。
新しい狩猟地が開拓される度に加筆するつもりでいたんだが、此処で締め括る。
どうも今年の冬に運営から新しい撮影機器が届くらしい。
帰りの空挺で見せて頂いた試供品は一線を画す代物だった。
ドンドルマ時代から何年も使い続けたカメラだ。
この世代、2014/10/31現在迄で撮影可能な野外キャンプ全てを収めた当コラムを捧げよう。
続きは、また今度な。