この世界は美しい。
人工と自然は相容れぬものと考えられがちだが
建築物の廃墟に垣間見る幽玄な雰囲気が、その境界を曖昧にする。
此処は樹海を抜けた先の台地に佇む古代遺跡。
強風に吹き行く暗雲の下、
原型を留めていない瓦礫と土台が静かに迎える。
書士隊の調査によると、周辺の気象は不安定で
遺跡の位置が判明した今でも自由に訪れる事ができないらしい。
その環境故か、原生生物は数少ない。
石畳の先に続く石の架け橋。
隔絶された台地に雲すら貫く古塔が聳える。
外壁の多くが損傷し、今にも倒壊しそうだ。
塔の内部は植物が根付いている。
嘗て人の往来があったであろうロビーは蟲の集落と化していた。
支給品の虫網が魂を燃やす。
外側から伺えた塔の抉れた側面の階層。
失われた柱の代わりに巨大な根が天井を支えているものの
一部は根の成長によって破壊された感が否めない。
やはり放っておけば何時かは崩れそうだ。
塔の中腹には所々に開けた階層がある。
元から広場だったのか、何らかの襲撃で大部分の外壁が吹き飛んだのかは解らない。
自然に壊れる程度の建造物なら、最早今立っている場所も残ってはいない筈だ。
眼下を流れる雲の狭間から地平線まで続く樹海を一望できる。
頂上への道は遠い。
この辺りで遺跡入口で撮った一枚でも編集するとしよう。
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崖に挟まれた細道を射光が照らす。
吹き抜ける風の音と小河のせせらぎに苔生した遺跡の気配が消える。
続きは、また今度な。