この世界は美しい。
騒がしい日の光から木々により隔絶された一廓。
水の流れに耳を澄ませば、何時の頃からか背後に吐息が聞こえていた。
水面に映る影は無い。
霞龍の大剣が普段より心なしか強く煌く。
振り向かずに逃げた方が良さそうだ。
撮影予定地を後に脱兎の如く走り去る。
暗所を照らすのに手頃な発光性の得物を持って来た事が
返って素材元の怪物を呼び寄せてしまったらしい。
古龍は謎が多いな。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
安全な撮影場所へ向かおう。
森丘の森林地帯は雰囲気が一環していて方向を誤り易い。
私が狩猟を始めたばかりの頃は
地図を持たずに出歩くと、獣人の集落へ向かったつもりが
山菜爺の住処へ出てしまうなんて事もあった。
森丘の奥地にあたる憩いの場。
沼地とは異なる種類の蓮が池に咲き、
囲う崖には紫陽花が群生する。
木漏れ日の先には茸の腰掛が笠を広げていた。
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暗がりの中、一点を射す光に水を争う同胞は育たない。
やがて彼は腰掛を作り、旅人を待った。
続きは、また今度な。